お金をはらう、そして楽しみをもらう。これが普通の趣味の世界だが将棋はどうだろうか?

ディズニーが好きでディズニーランドに良くいきます。プロ野球が好きで、毎試合見に行きます。そんな趣味を楽しんでいる人は、世の中にはたくさんいるわけです。人生、楽しいことがあるってやっぱり素敵ですよね。そして、これらの趣味の世界でも、お金は使われて、世界を回す原動力のひとつになり、ある人たちの雇用も生み出します。継続するためには、お金をはらうかわりに、楽しみをもらう消費者と、お金をもらう代わりに楽しさを提供する業者が、それぞれ、うまい具合にバランスがとれたときに市場の「成長」や「維持」が実現します。

それに対して将棋はどうだろうか、と考えると非常に特殊です。将棋はほかの趣味と違って、とにかく勉強にしろ、対局して負けたときにしろ、しんどいなーと思うことが多いです。お金はらってしんどい思いする人なんていないわけで、それを超える楽しみを見いだせる一部の人たち、超少数派が市場のベースになっています。

最近はやりの”観る将”については、そういった意味では非常に趣味として健全で、たのしむ、ということに主眼が置かれており、これ構造的には正しい姿だったりします。

将棋の世界って、そう考えるとやはりプロ棋士ってとても重要なわけで、憧れのひとに会えた、一緒に対局してもらえた、みたいなところで満足を提供し、お金が動くようになるっていうのは、すばらしいわけですね。

将棋を指して楽しむ、というのは本当にスタンダードではあるのですが、指して楽しめる人って、そもそも勉強していて、成長を実感し、そして”勝てる”ことが楽しいわけです。勉強しても無駄で、いつも負ける、これが繰り返されて、お金を払って楽しもうなんて人はいないわけです。鬼強いCPU将棋と、100戦やって100敗して、あー、たのしかった、また明日もやろう、このソフト、また新作買いたいなーと思う人などおらず、やっぱり楽しませることを万人に提供しようと思うと、指すことをベースにしていく時点で、限界があります。

そもそもどんだけ勉強しても、相手がより勉強すると、相対的には弱いままであり、勉強が報われることはないわけです。ここもすごい構造として難しいですね。勝つと楽しい、でも、同じメンバー全員が勉強すると、50%の人は、努力したのに楽しくなくなってしまうわけです。しかも、お金をはらう。これは、もう消費者目線で考えるととんでもなくつらいですね。

プロ野球のファンの多くは、野球をまったくやっていない人です。もちろんやっていた人も多くいますが、野球を自分がやっていたから、みたいなところで、ファンの間で変な力関係が働くことはまったくありません。どれだけ、ひいきのチームを愛しているか、という点が重要であり、本人がどれだけ野球をやってきたから、そしてどれだけ成績を残したか、ではありません。野球をやってきた人も、まったくやってこなかった人も、うまい人も、下手な人も、自分が応援するチームが、頑張って、勝つ姿をみて、その感動を共有することが、ファンとしてつながっていれば、それでいいわけですね。

将棋のファンはどうかというと、ここはすごく幅広く分かれますね。共通しているのは、プロの人たちのことは興味がなく、自分がプレーすることに重きを置いている人がいるということ。この人たちは、どんな世界にもいて、ある意味では当然の存在なのですが、この層はどの市場においても消費量が少なく、市場規模は非常に小さなものです。メインはそっちではなく、やはり憧れに対するバイアスをもっている人たちです。

ファン向けのグッズ、ファン向けのイベント、こういうものは本来、どの市場でも非常に高い利益を生み、また労働集約型のモデルではなくなるので、利益率も高く、ここが成功するかどうかが、とても重要であるといえます。イベントは二次利用のコンテンツがビジネスとして成立するかどうかがカギで、ただのイベントだけだと、スケールしない、という点で、ここも悩ましいところです。プロ野球であれば、球場に来た人のチケット料金と、ついでに買っていくファングッズ、というだけでなく、そこに加えて放映権であったりが、利益として大きくなるわけです。しかも、ファンがみて、さらにファン化し、しかも一緒に見ている人も刷り込みによってファンとして増殖していくというおまけつきです。見ていて、楽しい、消費もする、さらに顧客も増える、楽しませることができるというのは、どの業界でも重要なことであり、しかも儲かることです。

お金を払って苦しい思いをさせる、これをどうやったらなくせるかは、非常に大きなポイントな気がします。ほんとうに観る将ってすごい大事な存在だかなと思うわけですが、その一方で、一部の将棋に興味はないのかな~という、お気に入りの女流の方たちのイベントにだけ足しげく通う人たちがいることも事実で、あっちの方向で行くと将棋である必要もなくなるわけで、またここも難しいですね。

みんな楽しくなるといいですね。その結果、業界全体が儲かるともっと良いと思います。