将棋ウォーズと将棋倶楽部24における強さの比較を気にする人が多いことでみえてくる、将棋が普及しない根本的な原因となる構造的課題

近年、ネット将棋というと将棋ウォーズがNO1の地位についた感がありますが、不思議なもので将棋倶楽部24こそが本物の将棋指しが集まる本丸であるというような意見、風潮がけっこうあります。そして、決まって多くの人が気にするのが、それぞれの段位・級位の実力差、比較ですね。将棋倶楽部24の10級ってどれくらいの強さなのか、であったり、将棋ウォーズ初段ってどれくらいだろうかといった具合に、とにかく強さの比較がみんな大好きです。みんなやはり、きっと強くなりたいという気持ちが根底にあり、自分が強いのか、強くなれているのか、そういうことに不安があって気にしてしまうんだと思うのですが、それは高みを目指し続けることを目標にしているものとしてはすばらしいことです。ただ、ここで考えなければならないのが「どちらが楽しいか」といった議論がでてこないことです。

野球もサッカーも趣味として楽しんでいる人はたくさんいます。ピアノもそうですし、料理なんかも趣味という人たちはたくさんいて、そのアマチュアの競技人口は将棋のそれを大きく上回ります。こうしたすそ野が広いものの共通点は、「強い」というところを求めて努力をする人もいる一方で、多くは「楽しい」というものを求めている人たちだということです。

プライベートで、趣味としてたのしんでやっているフットサルで、鬼コーチのような人間がいて「やる気あるのか。へたすぎる。練習しろ。しかも毎日」なんていわれた日には、次の日からほとんどの人は参加しないですよね。努力は人生において大事ですが、趣味の世界でそれを強要されると、ほとんどの人は、楽しいものではなくなってしまいます。人生を楽しいものにするための趣味なんですから、それが達成できないなら辞めていくのは当然のことです。

練習しなくてもたまに参加するだけで楽しい。アマチュアリーグに参加して勝ち上がっていくことを目標にしている人もいるけれど、そういう人たちは少数派。これがとても重要なわけです。強さを探求する人が少数派、たのしさを求める人が多数派、これが競技人口が多い種目い共通点のひとつです。

将棋倶楽部24、将棋ウォーズ、同じネット将棋のサービスなのに、不思議とゲーム性が違うところを感じるあたり、面白さの種類が違う気がします。どちらが強いか、それぞれの強さの基準はどれくらいか、といった強さ偏重ではなく、もう少し、努力しない人たちでもおもしろいと思える何かが議論されはじめると、大きく広がる気がします。ただ、そうなると既存のファン層は不満を持つかもしれませんから、すべての人が満足するバランスというのはなかなか難しいですね。