コンピューターが強くなってもプロ棋士の存在価値はゆるがない。本当の脅威は強いアマチュアの将棋指し

電王戦で盛り上がった人間VSコンピューターという構図は、AIの進化によってある程度、終着点が見えてきて、まあやっぱりコンピューターって強いですねというところが結論になってきた感があります。ただ、一時期騒がれた話のひとつに「AIが強くなったらプロ棋士は存在価値がなくなるんじゃないか」という論争については、いまだに話は続ているところがありますが、コンピューターの進化はプロ棋士の存在を脅かすものでは決してない、というのが個人的に思うところです。

たとえばオリンピックではフルマラソンの試合が行われていますが、自動車のほうが早いんだから、オリンピックのマラソン選手には価値なんてないという人はいません。そもそも、人と人の戦いを通して、懸命に努力する姿を見て楽しみ、勝ってくれたらもっとうれしい、というのがこの手の観戦者の心理です。仮に、オリンピックの試合に、世界最速の自動車が出場し、他の選手たちを圧倒して勝ったとします。その時、その自動車を運転している人は称賛を受けられるでしょうか。たとえば、自動車が登場したばかりの頃であれば、馬車との競争でどちらが早いのかというレースには、多くの人は興味を持ったかもしれません。それは黎明期の自動車が遅いものであり、馬車の方が早いと思っていた人が多かったためです。しかし、自動車というものが進化し、自動車は早いのが当たり前と多くの人が知った後はどうでしょうか。馬と自動車が戦うなんて、そもそもその試合がおかしいとなるでしょう。馬がかわいそう、自動車に乗っている人は卑怯などという論調すら、でてくるのではないでしょうか。

まず、コンピューターと人が戦えば、コンピュータは勝ちます。最終的にはそうなるのは必然です。しかし、それが当たり前になった時、この両者を対戦させようとすること自体に興味を持つものはいなくなり、それを実施したところで誰も盛り上がることはないはずです。黎明期にある”どういう結果がでるかわからない”という状況の一瞬だけ、成立する魅力といえます。

プロというのは、見る人たちが存在し、その人たちがそれを続けてほしいと応援することで、存在が成立します。応援は資金に代わり、プロが生きていくために、そしてその活動に専念するための環境となっていくわけです。ただ強いだけで、プロとして成立するわけでは決してありません。プロの人のひたむきな活動、努力する姿を見て、自分を含めた人間の可能性を感じたいから、つい観戦してしまうのです。ただ、強いというだけでコンピューターがプロ棋士の存在を脅かすものになるというのは、構造的に考えていけばありえないことです。

しかし、一方で昨今、急速に平均値が上がってきている、プロに近い実力を持つ人間。高いレベルのアマチュア将棋指しの人たちの存在は、コンピューターのそれとは違い、明らかにプロ棋士の皆さんにとっては脅威です。プロとして将棋に専念しているわけでもないのに、より効率的に研究、努力をして、アマチュアの人がプロ棋士たちを破り始めたら、その時はプロとしての存在価値はなくなっていくに違いありません。将棋という点から考えると、最後の敵は、最終的に同じ人間であり、コンピューターはそもそも敵ではありません。

藤井聡太五段が朝日杯で優勝して六段に昇段

2月17日に行われた朝日杯将棋オープン戦で優勝して昇段して、ついに藤井聡太六段になりましたね。ただ勝ったというだけでなく、また内容がすごかったですね。この日は羽生善治竜王、広瀬章人八段という超強豪との公式戦ですから、内容の強さも驚かされるものでしたね。特に決勝戦は終始、読みをリードし続ける展開でまさに圧巻でしたね。対戦相手のお二人とも強さは圧倒的なだけに、これは純粋に藤井聡太六段が強いという結果に尽きる出来事だった気がします。

そして今回のニュースも一般メディアでもけっこう露出されていたのが印象的です。やはり若いスターの登場というのはどの世界でも大切なものですね。今年も活躍に期待したいです。

ただ、今回は広瀬章人八段と久保利明王将が立場上、少しかわいそうでしたね。スポットライトが羽生善治竜王と藤井聡太五段に当たりすぎていて、こう、なんともですよね。致し方ないとはいえ、察するに余り有るものがあります。

王将戦の第三局は久保利明王将が豊島将之八段を破って2勝1敗とリード

1月から始まった今年の王将戦は久保利明王将と豊島将之八段という、順位戦のA級でも名人への挑戦権をかけてトップ争いをしている2人の対決となり、いろんな意味で楽しみなタイトル戦。1勝1敗で迎えた第三局ですが、非常に強い内容で久保利明王将が勝利。いや、本当に強かったですね。振り飛車党はプロ棋士の中では非常に少ない中で、菅井竜也王位の獲得に続いて、久保利明王将がタイトルを防衛できたとするならば、これはアマチュアの振り飛車党の人たちにとってはうれしいお話です。決して豊島将之八段に負けてほしいわけではありませんし、むしろ応援しているものの、振り飛車党の方が激減していく昨今のプロ棋士界では、なんとか振り飛車党の方たちにも頑張ってもらいたいと思うのは私だけではないはずです。しかも、久保利明王将と菅井竜也王位の2人は、振り飛車といってもさばきの上手さと、重厚さという種類の違うタイプだけに、お二人が頑張ってくれるというのは、将棋界全体としての多様性という観点からも非常に重要な気がしています。もちろん豊島将之八段のことは好きですが、将棋界全体のことを考えると、、、と悩ましいところです。

いずれにしても、A級順位戦と王将戦、どちらも久保利明王将と豊島将之八段の2人の戦いからはしばらく目が離せそうにありません。次局も楽しみにですね。

順位戦で9連勝を決めてC級1組昇級が決定!加えて藤井聡太五段に昇段

先日のC級2組の順位戦での対局での藤井聡太四段と梶浦宏孝四段の対局。藤井聡太四段が勝利してついにC級1組昇級を決めましたね。9連勝で1年目で決めてしまうのはさすがですね。これで五段に昇段となり、将棋界全体としても非常にうれしいニュースです。ただ、個人的には梶浦宏孝四段を応援しているということもあり、この対局だけは非常に心がもやもやするものでした。中盤までは梶浦宏孝四段が優勢だと思われただけに、本当に残念です。でも、藤井聡太五段が勝つことは将棋界としては露出も増える良いニュースだと思いますし、やはりもやもやする状況です。今年は梶浦宏孝四段の昇級はなりませんでしたが、来年こそは達成していただきたいと心から思う次第です。

この対局以外にもA級の順位戦もあって、昨日は将棋ファンの皆さんは将棋三昧の一日だったのではないでしょうか。そのなかの豊島将之八段と三浦弘行九段との対局で、豊島将之八段が負けてさらに順位戦はさらに混とんとした状態になっており、こちらも目が離せない状態。今から最終局が楽しみですね。