全く将棋がわからない人に、どうやって興味をもってもらうかを考えていくと、普通に将棋を指すだけではなかなか難しいという問題にぶつかります。勝てなきゃたのしくないわけですが、勝つためにはたくさん勉強しないといけないわけです。さらに、結局、将棋を続けている人ってみんな強いので、将棋好きな人とやってもまず勝てないので、普及のハードルが高すぎるのは悩みの種です。
でも、昨今のネット系の将棋中継が増えてきたおかげで、将棋は指さない人も楽しめるポイント、解説というところから攻めるのはありそうだなと思ったという話です。これまで将棋中継は有料のケーブルテレビ系が多かったので、そもそも好きな人にしか見てもらえないという、良くないところに収斂されていくという構造にありました。ただ、AbemaTVをはじめとして、ネットで無料で見れるようなチャンネルがでてきてくれたおかげで「なんとなく見てみようかな」という人に訴求できるルートができました。これは大きいと思うわけです。
ここですごいツールがやっぱり棋士たちによる解説のところ。竜王戦の第三局の中川大輔八段と貞升南女流初段のポケモンGOのやりとり、まるでよくわかない話をされている父親が娘と会話をしているような感じで、なんとも楽しい気持ちにさせてくれましたよね。貞升南女流初段がポケGOやりすぎじゃないかという話がネットで話題になるくらい、わりとインパクトのある話だったわけですが、中川さんがわからないなりにやさしく対応し続ける、なんとも和み、さらに棋士に親近感をもてるやりとりでした。また、毎度のことではありますが、第四局では木村一基九段が解説に入って、もはや相手であってももたのしい雰囲気がひろがり、自虐的な夫婦ネタなどは、もはや将棋はまったく関係なく、みんなが楽しめるものでした。飯野愛女流1級とのやりとりも楽しんでいた人も多いはずです。しかも、木村九段の終盤の読みはずばりなもので、ほぼ木村九段の想定通りの流れで羽生さんが勝ち切ってしまったところは、将棋がわかる人ならさらに感動できます。
解説というと、すごく敷居が高い印象をされる人もいますが、持ち時間のタイトル戦などでは、本当に解説されている時間って終盤以外はそんなに多くないですよね。棋士の1週間であったり、食事系であったりといった話で、非常におもしろく、親近感をもてる良いコンテンツだと思っています。これ解説という表現じゃなくて、他に何かないものですかね。ここをしっかりと形にしていくと、棋士を通して将棋に興味をもってもらうってこともできると思うんですが。みんなに将棋界のおもしろさがもっと伝わるといいですね。